獣医師を目指した経緯

 

 犬、猫、小鳥、ハツカネズミ、ハムスター、金魚など...幼少期から常に何らかの動物を飼っていました。
 今思えばしっかり最後まで面倒を見て、かわいがってあげていたかは自信がありません...。それでも、たくさんの思い出をもらいました。


 そんな動物の絶えない家庭で育ったことで、物言えぬ小さな命に対する慈しみの気持ちというものが強く根付くきっかけになりました。

 

小学校低学年のある冬の日でした。

 下校途中、近所の川で中学生の男の子たちが、生まれて2ヶ月くらいの子猫を凍てつく川に放り投げて遊んでいました。

 その子猫は溺れながらも必死に陸までたどり着いたあと、また放り投げられ瀕死の状態にまでなっていました。

 かわいそうに思い、止めてあげるようにお願いしましたが、ぶたれて、それ以上は何も出来ず、見守るだけでした。

そのうち、その中学生たちも飽きて、子猫を放置して去っていきました。

 私はそのブルブル震える子猫を自宅まで抱えて帰り、すぐに暖房の前で温めてあげましたが、私の腕の中で泡を吹きながら息絶えました。

その光景はいまだに脳裏から離れず、夢に出てくるほどです。

 

 そんなこともあって、まもなく命を救う医師を志すようになりました。 当時はまだ幼く「命を救う仕事=お医者さん」だと思っていたので、大学受験まで医師を目指しておりました。

 そんな中、遅まきながら獣医師という選択肢もあるのだと知り、その多岐にわたる活躍の場にどんどん惹かれていったのです。

 受験の失敗もありましたが、晴れて獣医科大学に進学しました。しかし大学では色々な意味で衝撃を受けました。

 獣医師になるために動物に対して実習や実験を行いました。模型などを使用したこともありましたが、生きた動物を使用しないと勉強にならないことも多く、使用する動物の数は多くないとはいえ、非常に心を痛めました。当時は減滅して大学を中退してしまった人もいました。

 何のために獣医科大学に入学したのか、そういうことを考えさせられ、改めて命の重さ、大切さを再認識させられました。

 

我々獣医師はかけがえのない命を犠牲にし、今があります。

 失われた尊い命のためにも、より多くの命を守るお手伝いが出来る獣医師になるべく、これからも日々、精進してまいります。